110.ミミズのいる風景 [生物]
相変わらず忙しいんだけど、こないだ一週間受業が無い時があったんだけど悲しいかな仕事を持って箱根にこもったよ、でも仕事のあい間あい間にはいろいろ出かけたり見たりやったりしてる。
気分転換がないとねー。やってられませんぜ。
箱根に行った時も、強羅に泊まったんだけど、夕陽を見に仙石原に車をとばしたり、富士屋ホテルにケーキを食べに行ったり、帰りは大湧谷に黒ちゃん卵黒玉子を買いに、旧東海道沿いの畑宿に母親に頼まれていた寄せ木細工の財布を買いに寄ったりした。
黒ちゃん卵黒玉子はおいしいよねー。
ゆで卵って蒸すとおいしんだよ。“ゆで”卵と言いながら。ここでは5~6分温泉でゆでた後、5~6分温泉の蒸気で蒸してた。
まわりの黒いのは硫化鉄だね。ちょうどこの時期は中2に硫化鉄を教えるので、その色を中2に見せるためもあって買いに行った。5個入りで売ってるんだけど1個だけ残しといて授業で見せた。^^b
しかしうまし。うましなので箱根に行くとよく食べに行く。
1つ食べると3年7年寿命が延びるのでだいぶ伸びてるはず…なんだけど、なんか今回はその表示を見なかったような。
袋にも「寿命が延びると言われています。」みたいな感じでしか書いてなかった。もしかして薬事法違反で当局の指導を受けた?
畑宿は寄せ木細工の職人さんの集落で、その職人さんの店で売ってるやつは芦ノ湖畔で売ってるやつよりなんかちょっとよい感じ。
頼まれてた財布を買って、ついでに携帯ストラップも買った。(下ーーーの写真に写ってる)
昨日は目黒の北里研究所病院に用事があって行った後、同じ目黒の自然教育園に今週の本の紹介に合わせてミミズの写真を撮りに寄ってきた。
本当は明治神宮に行こうと思ってたんだけど、あそこは参道以外は原生林になってて、落ち葉の下の生物がごちゃまんなのよ。落ち葉をめくるとな。
小さい頃から銀杏を取りに行ってるのでよく知ってる…ような気がする…ような…柵の中は一応立ち入り禁止なのではっきり言えましぇーん。^^;
ただイチョウの木の下に向かってけもの道がたくさんあることは言っておこう。
まぁでも自然教育園でもいいかぁ、と思ったんだけど失敗だった。
道端はいろんな草を見せるためか枯れ葉の堆積が薄くて(吹き飛ばしてる?)、ちょっとかき分けたけどミミズは見つからなかった。
もちろん探せばたくさんいるはずだけどね。時間がないのであきらめた。
ただいろんな秋の実がなってたよ。
真ん中の湿地のところではマユミがきれいな実をたくさんつけてた。
帰り、出入り口近くの三叉路(ただし分かれるのは一般立ち入り禁止道)でムクロジの名前を見つけた。↓ 真ん中右の木ね。数本植わってた。
今まで気づかなかったなぁ。 探してみたら実がたくさん落ちてたよ。
さて、今週の本「ミミズのいる地球」の著者中村方子氏はミミズの研究の第一人者らしい。
そもそもミミズの専門家はほとんどいないらしく、特に中村氏が研究を始めた頃は国内のミミズの分類からして手を焼いたらしいよ。分類は生物の研究の基本だからね。それがなされていないっていうことは、まったく手つかずの分野だったっていうことだな。
そんなミミズの研究をなんで始めたかというと、一つは若い頃チャールズ・ダーウィン著の「ミミズと土」を読んで興味を持ったらしい。検索したら平凡社ライブラリー(新書)にあった。ミミズがいかにして土を作ってくれているかについて書かれているらしいよ。今度読んでみよう。
そう、ミミズが栄養豊かな土を作ってくれて、初めて豊かな生態系が生まれる。もちろん他にもダンゴムシやら菌類・細菌類やらも大活躍だけど。でもミミズがいて活躍してくれてるかどうかは土づくりの大きな鍵を握る。ちょうど今頃中3が学校で習ってるはず。
庭に枯れ葉を積み上げて腐葉土を作ってると早速ミミズがやってきてせっせと腐葉土作りを手伝ってくれる。
そういえば今朝の朝日にミミズを使って良い土作りをしている調布市内の小中学校の取り組みが紹介されてたね。偉大なミミズちゃん。 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ←ミミズ^^ゞ
その偉大な~ちゃんは現在地球上に0.44㎜から3.6mΣ( ̄ロ ̄lll)の個体まで約3000種類が見つかっているらしい。日本には155種類もいるんだそうだよ。
この本は、アニマ(懐かしい!)などに発表したものをまとめたらしいのでちょっとまとまりが悪いけど、苦労して世界を飛び回りながらミミズ学を開拓していったことや、ミミズの生態学、ミミズと環境・環境破壊との関係など、中村氏のミミズ研究史の総括みたいな感じ。
なかなかおもしろい本だった。上に書いたようにちょっとまとまりが悪いんだけど、どの分野でもパイオニアの仕事には興味深いものがあるね。
◆中学生で読める度:★★★★☆
◆内容充実してる度:★★★★☆
箱根は今頃紅葉が凄いんだろうね。行く暇ないなぁ。
自然教育園はまだ全然だった。実はいろいろあったけどね。これはセンニンソウ。
ガマの開いてない穂もいっぱいあった。
ついでに宮ノ下富士屋ホテルの寄せ木風ケーキ。紅茶もおいしかった-。
気分転換を入れると仕事もはかどるってものよ…なのよ、きっと。^^;;
106.ミクロにひそむ不思議 [生物]
一昨年の夏に僕が名前をつけた月探査衛星「かぐや」。今6月10日11時頃だけど、あと数時間、JAXAのHPによれば、
落下予測日時:平成21年6月11日 午前3時25分頃
落下予測場所:東経80.4度南緯65.5度付近
だそうだ。落っこっちゃうのね。というか、落っことしちゃうのか。
JAXAのHPに行けばかぐやの撮ったハイビジョン映像がいろいろ見られるよ。 →私を押して。
今週は牛木辰男・甲賀大輔著「ミクロにひそむ不思議」を読んだ。今年の2月に出た本で、走査型電子顕微鏡で身近なものから細胞中の微小器官まで拡大していく。まぁ、写真集+解説みたいなもんだね。
ところで電子顕微鏡には透過型と走査型がある。
透過型は普通の顕微鏡のようなもの。光のかわりに電子を使うけど、見たい物を透過してみる。こんな感じ。wikipediaにあった鳥インフルエンザの写真だよ。150000倍だ。
一方走査型は、見たい物の上をなでて見ていくような感じ。立体的にそのものが拡大されて見える。これもwikipediaにあった花粉の写真。約500倍。
この本はボールペンの先のボールから細胞中のミトコンドリアの二重膜まで驚きの写真の連続。中学生の理科にも関係のある気孔や維管束やジャガイモ中のデンプン粒なんかの写真もあるよ。
本屋で立ち読みするだけでもおもしろいかも。←別に立ち読みを勧めてるわけじゃないけど。
◆中学生で読める度:★★★★★
◆内容充実してる度:★★★★☆
105.光るクラゲがノーベル賞をとった理由 [生物]
理科散歩の本を探すには、 「1.ソロモンの指環」みたいに昔読んだやつとか、岩波ジュニア新書は無条件で読んでる、 「42.アフリカにょろり旅」みたいに本屋をぶらついてて見つけたり、新聞の書評欄(うちは朝日新聞)だったり、ただこれは「これなら中学生にも!」って思ってもたいていはずれる、 「世界の測量」みたいに。検索でひっかかるやつもある。 「66.神様のパズル」や「102.天使と悪魔」は“素粒子”や“反物質”の検索で見つけた。
新聞の出版社の広告欄もよく見てる。新書の新刊はだいたいここで見て狙いをつける。それ以外のそそるやつもとりあえず買って読んでみてる。ボツにしちゃうやつもあるけどね。
今回の本、生化学若い研究者の会編著「光るクラゲがノーベル賞をとった理由」も先週ぐらいの新聞一面下の広告で見つけた。
去年ノーベル用を取った下村脩氏がオワンクラゲから見出した発光物質イクオリンとその光を受けて蛍光を発するGFP。受賞の時にいろいろ新聞記事やら本が出たけど、どれも今ひとつ分かりにくかったが、この本でよく分かったよ。
wikipediaより
発光生物の発光物質で昔から有名なのは、夜光虫やら、ウミホタルやら、ホタルイカのあの神秘のブルーの発光物質ルシフェリン。酵素ルシフェラーゼと混ぜると青い神秘の光を出す。残念ながらwikiに良い図像がなかった。
ウミホタルは僕が高校生の時、生物の授業で扱ったんだけど、手の上で乾燥ウミホタルに水を一滴垂らしてつぶした時の青い光は忘れられないね。千葉の館山から勝浦あたりの海に、夜、魚のあらを入れたペットボトルを投げ込んどくととれるよ。
こんなHPも見つけた。 →ウミホタルショー実行委員会
さて、下村氏ももともとはこのルシフェリン-ルシフェラーゼ系の研究者だったらしい。それがアメリカに渡り、研究の対象をオワンクラゲの緑色の発光に変えた。
名古屋港水族館のHPできれいに発光するオワンクラゲの画像を見つけた。今まで見た中で一番きれいに写ってる。この本の表紙の写真よりきれい。^^; →私を押して。
使えるオワンクラゲのイクオリン発光の図像がないので、去年科学博物館の「キノコのふしぎ展」で撮ったキノコの写真を載せとこ。これも確かイクオリンだから。その時載せたけど。
“緑色の発光”と書いたけど、実は発光物質イクオリンが出す光は“青”。ルシフェリンと同じ青だが、イクオリンは酵素が必要ではなくカルシウムイオン(Ca2+)の介在で発光する。
その青い光を発光タンパク質GFP(Green Fluorescent Protein)が受け取り、“緑色の蛍光”を出す。
つまりこんな感じ。 イクオリン+Ca2+ → 青い発光:波長460nm → GFP → 緑色の蛍光:508nm
GFPは青い光を受けて始めて光を放つ。さらにその遺伝子は決定されていて、一部を変えることで青や黄色やら様々な色のGFPの仲間ができる。ちなみに青はCFP、黄色はYFP、赤色はRFPという。
さてさて、これが何でノーベル賞に値するかというと、イクオリンはCa2+があると発光するので、Ca2+の検出に使えるわけだ。Ca2+は生体内ではいろいろなところでスイッチの役割をしてる。その働きが目に見えるようになったわけだ。すごーい!
一方GFPは、その遺伝子を他の遺伝子にくっつけとくとその遺伝子によって作られた細胞が体内でどのように動いたり増殖したるするかをやっぱり目で追っていけるわけだ。その生き物を殺さずに、生きたままで染色できる!
中3で細胞の核を染色して観察することを習うけど、その時細胞を殺すよね。その染色を生きたままできるわけだ。例えばがん細胞にGFPを組み込むと、そのガン細胞が体の中でどのように他の部位に転移していくかが、青い光を当てると緑色に蛍光を発するのでずーっと見ながら観察できるわけだよ。神経1本を緑色に光らせて生きたまま観察できるわけだ。すごいだろ?
ちなみに下村氏はイクオリンとGFPを発見し、その構造を決定しただけで研究対象を変えてしまった。その応用を考えたのは他の二人の学者で、今回のノーベル賞はその三人の共同受賞だよ。
れいによって遺伝子関連が出てくると中学生にはちょっと厳しい。でも全体的には分かりやすいし、最前線の研究をしてる若手研究者達が書いてるので何より詳しいのがなにより良いね。
ちょっと“例え話”が多いのが難。これは分かりやすくするためにやりがちなんだけど、気をつけないとかえって分かりにくい。「洗濯機が洗いと脱水の二層式じゃなく全自動であるように…」って言われても中高生にはね。
生化学若い研究者の会HP →私を押して。
◆中学生で読める度:★★★☆☆
◆内容充実してる度:★★★★☆
オワンクラゲの写真はないけど、前にブログに出した江ノ島水族館のクラゲの写真でもお楽しみください。^^y
103.ウイルスってなんだろう [生物]
入試が終わり、秋期講習が始まるまで、いや4月の授業が始まるまでかな?とにかくこの春の時期が一年で一番のんびりする。実際には新年度の授業が始まってるし、入試問題の解説をする研究会、僕は今年はあさって金曜日の池袋を担当、があったり、確定申告があったりでヒマってわけでもないけど、でも気分的にのんびりしてます。
で部屋の掃除をしたり(つまり1年に1回か!?)、病院で気になるところのメンテナンスをしたり、久々にギターの弦を張り替えたりしてる。
昨日から今日にかけては24時間心電図をやった。
でも昨日は特に何する予定もなかったので、ちょっとは心臓に負荷をかけた方が良いのか?と思い、外す前に、自転車で15分ぐらい走り洗足池公園に桜のつぼみの様子を偵察しに行ってきた。
まだ全然ダメ。でももうすでに“花見の家”が3・4軒出ていた。海の家みたいなやつ。下の赤・青・黄色のやつがそう。週末にはお花見ならぬ“おつぼ見”をするんだろうかしらん。
今年はインフルエンザがけっこうはやったね。教え子受験生も何人かかった。予防接種してたのに。インフルエンザはウイルスが引き起こす病気だからかかると治す薬がない。タミフルやリレンザはウイルスの増殖を抑える薬だね。治す薬じゃない。
僕はインフルエンザにかからなかったが、うちのオババ大統領(母親のことだよ^^)が帯状疱疹(たいじょうほううしん)にかかった。これは神経の中にウイルスが入って引き起こす病気で、とにかく猛烈に痛いらしい。ウイルスによる病気だから、やはり治す薬はない。いろいろ良い薬があるらしいんだけど、症状を抑えるためのもので、ウイルスをやっつけることはできない。
なんでウイルスをやっつける薬がないのかというと、ウイルスは薬がはたらく対象である体を持っていないからだ。細胞がない。例えば抗生物質のあるものは細胞膜を作らせないようにして細菌をやっつける。
でもウイルスにはその細胞膜が無い! 「だって細胞が無いも~ん♪♪♪ 」とのらりくらり逃げてしまう。
そう、ウイルスには細胞と呼べるものが無いのだよ。遺伝子を載せたDNAまたはRNAと殻しかない。自分一人じゃ子孫を残すことも出来ない。エネルギーを使うこともない。生物だかなんだか分からない。それがウイルスだ。
薬が効かないわけだ。ただの物質だから。のれんにうで押し、ぬかにくぎ、馬の耳に念仏、ブタに真珠、すうちいに小判…だいぶずれてきた、やっかいなやつらだ、体の免疫細胞が喰いつしてくれるのを待つしかないんだよね。
と、ここまでは知っているのだが、もう少し知りたいと思い、岩波ジュニア新書に岡田吉美著「ウイルスってなんだろう」があるのを思いだして買ってきて読んでみました。
いやぁ、さらなる驚きの事実が続々と。まったくなんなんだろうね、このお方たちは。
と、その前に、高校の生物で誰もが見て驚くウイルスの1つ、ファージの図をwikipediaからペタリ。
この驚くべき姿。月着陸船のよう。「ウイルス核酸」っていうのが遺伝子の集まりだね。あとは“殻”。生きてる部分は無い、とも言える。エネルギーを使わないから、食べる必要もない。だから“壊れる”けど死なない。元々生きてないんだから。
この着陸船、大腸菌などの細菌に着陸すると、自動的に中の遺伝子を細胞の中に注入。
細菌の細胞はその遺伝子を自動的に読み取ってこのウイルスの体の部品と遺伝子を大量生産する。すると自動的にこの着陸船が組み上がり、細菌を壊して外へ出てくる。
インフルエンザウイルスは遺伝子が11個しかないらしい。つまり体の部品の種類が11個しかない。この中には体を組み立てるための酵素なんかも入ってるから、体を作る部品の種類はもっと少ない。
これを我々の体の細胞に大量に作らせて、その細胞を壊し、次の細胞にとりつき、…あっという間にものすごい数に増えていく。何しろ単純な構造だから増えるのがめちゃ早い。
タミフルなんかはこの細胞を壊して外へ散らばるのをおさえるらしい。他にもウイルスに効く薬は、着陸を阻止するとか、体が組み上がるのを阻止するとか、そんなことで症状が出るのをおさえこむんだそうだ。
そうこうしてるうちに体の免疫作用がウイルスをやっつける。
ここでさらなる驚きが。
エイズウイルスなどのレトロウイルスといわれるグループは、自分のDNAをとりついた相手のDNAの中に組み込んでしまうんだそうだ。だから免疫作用でも駆除することが出来ない。自分のDNAを壊すことは自分の死を意味するからね。
組み込まれた遺伝子は、とりついた相手が自分の遺伝情報を読む時に一緒に読まれ、部品を作ってしまう。
一度入り込まれたら、そのDNAはその細胞が増殖するたびに一緒に増殖していくわけだ。もうあとはその遺伝子がはたらくのをおさえるしかない。
なんと。だからレトロウイルスを利用して遺伝子の組み換えを行うのか。目的のDNA配列をそうっと細胞のDNAの中にすべり込ませちゃうわけだ。
驚きの「生物」ウイルス。でもそのおかげで我々人類は分子生物学を発展させ、遺伝子工学で、レトロウイルスの力も借りて、難病を克服するようにもなってきた。科学の功罪とは!あとは先週の「天使と悪魔」下巻を読んでくれ。
◆中学生で読める度:★★★★☆ 中学生はDNA・RNAのところを雰囲気で読んでね。
◆内容充実してる度:★★★★★
ギターの弦は今回GibsonのUltra Lightにしてみた。ここんところMartin Extra Lightだったんだけど。太さはGibsonの方が0.01インチほど太い。どっちにしろ最近はそんなに弾いてなくて指先が柔らかくなってるので、細いやつをチョイス。
値段がMartinの倍近くするだけあって、なかなか良い音だす。
98.利己的な遺伝子 [生物]
高校受験真っ最中です。まぁ中学受験も大学受験もですけど。特に中学受験は日曜からがたしか山場ですよね。頑張ってね!というか頑張ってください、お父さん、お母さん!
先週は「置くとパス」を出したけど、今週も去年も出した上野大仏を出しとこ。どーん!
この上野大仏様、上野動物園の正門の左の小山の上におわす。3年前に知ったんだけど、かつてはちゃんとした大仏として上野の山にあったらしい。それが地震やら火災やらでたびたび首が落ちるので、ついに顔面だけ外し、写真のように台座に埋め込んでしまった。
これでもう“絶対落ちない!”ということで、今は受験の神様(仏様?)になってる。お祈りしときました、みんなの合格を。ガンバレー!
さて、僕も頑張ってます。ついに98冊目。これも初めから入れようと思ってたリチャード・ドーキンス著「利己的な遺伝子」だ。
おっ、ついにきたか! 名前は知ってるけど読んでない…^^; という感想が大人の間から聞こえてきそう。歴史的な書といってもいいんだけど、意外に読まれてない。去年の中3のK・runeちゃんと話してるときこの本の話題になり、この辺の生物観の変遷を話したら「ちゃんと読んでる人に初めて出会った!」と驚いてた。
まぁ、中学生で読んでる人はまずいないだろうけど、まわりの大人にもいなかってことか。たしかK・runeちゃんのご両親は医学関係だから、そのまわりには読者がいるはずだが。そもそも彼女はちゃんは読んだんだろうか?そこんとこを聞くのを忘れた。
とまぁ、読んでることを驚かれるぐらい読まれてない。けど内容というか、そのエッセンスはかなり前から生物の教科書にちりばめられている。だから、そう、30代以下ぐらいの人はこの本の発想は多かれ少なかれ高校で習ってるはずだ。僕が持ってるのは1989年版だけど、一番古いのは1976年版だからね(今は増補新装版になってるみたい)。もちろん生物の先生によってはもっと前からこの本の発想を持っていたと思うけど。
しかし、DNAの二重らせんの構造をワトソン、クリックが発見したのが1953年だから、わずかそのあと20年でこの発想まで来たのはすごい。ヒトのゲノム(染色体上の全遺伝子のこと)の解読なんて遠い未来のこと(実際には2003年に終わった)と思われてた時代だからなぁ。まぁ、だから本の内容でその後疑問視されてる部分も当然いろいろあるわけだが。
さて、今回久々に読み返して、というか本当はまだ読み返し終わっていないが、やっぱり刺激的な内容だなぁ。中心となる発想は、扉内側にある言葉を借りれば、
われわれは遺伝子という名の利己的な存在を生き残らせるべく盲目的にプログラムされたロボットなのだ。
ということで、遺伝子こそが生命の本質で、われわれ生命体はその乗り物にすぎない、という。遺伝子という“利己的”な自己複製子は、自分のコピーを最も多く増やせることだけを優先させて生命体を進化させてる、という。『生物=生存機械論(表紙より)』だ。
この発想が、当時次々と明らかにされる遺伝の驚くべき仕組みと相まって、世界を大激震させた。かつ「あーっ、そうだったのか! 我々生命とは何だったんだ…orz 」とみんな一瞬思ってしまった。
ところで“利己的”の反対語は“利他的”、つまり自分は犠牲になっても他人のため、ということだが、この本が出る前の動物行動学の主流を占めていたのがこの発想だ。このブログの1冊目「ソロモンの指環」の著者コンラート・ローレンツたちが提唱した動物行動学の発想だ。
動物の行動の基本原理は“自己の遺伝子”を残すためではなく、その“種の遺伝子”を残すことである、というもの。そのことで動物の様々な行動が説明できるという。しかしこの本はそれをひっくり返した。
つまりこの本は単なる遺伝子の勝手な振る舞いを語っている本ではなく、動物の行動を“利己的な遺伝子”が主役という観点から解き明かしていく本なんだよね。だからゲーム理論なんかも出てくる。だから思想、教育界まで巻き込んだ大論争になった。だから何となくみんな知ってる。
さてさて、“生物=遺伝子の乗り物” “生命=遺伝子の発現の表徴”という発想に嫌悪感を抱いてる人もいると思うが、今はさらにこれも超えたところに生命があると考えられている。遺伝子すら生命の“道具”だったという発想だ。
遺伝子のはたらきが次々に分かってくると、遺伝子のスイッチが次々と切り替えられていくこととか、同じ遺伝子がいくつかの働きをするとか、ゲノムのほとんどが意味が無さそうだとか、その間に様々な物質が介在し、その濃度の差までも利用して生命ができあがっているとか、遺伝子を含めた様々な物質、重力までも利用して複雑系としての生命が成り立っているという生命観がいま組み立てられてきている。
というか、ますます生命とは何か分からなくなってきているということですかね。のぞけばのぞくほど深い。いったい生命って何だろうね?
だからまだ研究することが、考えることがいっぱいあるよー。理系に進めー!^^
◆中学生で読める度:★★★☆☆
◆内容充実してる度:★★★★★ 今週も、遺伝子に関して内容がちょっと古いところがあるけど。
チョコチップスの「合」バージョンと「格」バージョンを合わせて『合格』!みんなガンバってね。
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