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105.光るクラゲがノーベル賞をとった理由 [生物]

 理科散歩の本を探すには、 「1.ソロモンの指環」みたいに昔読んだやつとか、岩波ジュニア新書は無条件で読んでる、 「42.アフリカにょろり旅」みたいに本屋をぶらついてて見つけたり、新聞の書評欄(うちは朝日新聞)だったり、ただこれは「これなら中学生にも!」って思ってもたいていはずれる、 「世界の測量」みたいに。検索でひっかかるやつもある。 「66.神様のパズル」「102.天使と悪魔」は“素粒子”や“反物質”の検索で見つけた。

 新聞の出版社の広告欄もよく見てる。新書の新刊はだいたいここで見て狙いをつける。それ以外のそそるやつもとりあえず買って読んでみてる。ボツにしちゃうやつもあるけどね。

 今回の本、生化学若い研究者の会編著「光るクラゲがノーベル賞をとった理由」も先週ぐらいの新聞一面下の広告で見つけた。

 去年ノーベル用を取った下村脩氏がオワンクラゲから見出した発光物質イクオリンとその光を受けて蛍光を発するGFP。受賞の時にいろいろ新聞記事やら本が出たけど、どれも今ひとつ分かりにくかったが、この本でよく分かったよ。

WS000751 (2).JPGwikipediaより

 発光生物の発光物質で昔から有名なのは、夜光虫やら、ウミホタルやら、ホタルイカのあの神秘のブルーの発光物質ルシフェリン。酵素ルシフェラーゼと混ぜると青い神秘の光を出す。残念ながらwikiに良い図像がなかった。

 ウミホタルは僕が高校生の時、生物の授業で扱ったんだけど、手の上で乾燥ウミホタルに水を一滴垂らしてつぶした時の青い光は忘れられないね。千葉の館山から勝浦あたりの海に、夜、魚のあらを入れたペットボトルを投げ込んどくととれるよ。

 こんなHPも見つけた。 →ウミホタルショー実行委員会

 さて、下村氏ももともとはこのルシフェリン-ルシフェラーゼ系の研究者だったらしい。それがアメリカに渡り、研究の対象をオワンクラゲの緑色の発光に変えた。

 名古屋港水族館のHPできれいに発光するオワンクラゲの画像を見つけた。今まで見た中で一番きれいに写ってる。この本の表紙の写真よりきれい。^^; →私を押して。

  使えるオワンクラゲのイクオリン発光の図像がないので、去年科学博物館の「キノコのふしぎ展」で撮ったキノコの写真を載せとこ。これも確かイクオリンだから。その時載せたけど。

P1040377.JPG

 “緑色の発光”と書いたけど、実は発光物質イクオリンが出す光は“青”。ルシフェリンと同じ青だが、イクオリンは酵素が必要ではなくカルシウムイオン(Ca2+)の介在で発光する。 

 その青い光を発光タンパク質GFP(Green Fluorescent Protein)が受け取り、“緑色の蛍光”を出す。

 つまりこんな感じ。  イクオリン+Ca2+ → 青い発光:波長460nm → GFP → 緑色の蛍光:508nm

 GFPは青い光を受けて始めて光を放つ。さらにその遺伝子は決定されていて、一部を変えることで青や黄色やら様々な色のGFPの仲間ができる。ちなみに青はCFP、黄色はYFP、赤色はRFPという。

 さてさて、これが何でノーベル賞に値するかというと、イクオリンはCa2+があると発光するので、Ca2+の検出に使えるわけだ。Ca2+は生体内ではいろいろなところでスイッチの役割をしてる。その働きが目に見えるようになったわけだ。すごーい!

 一方GFPは、その遺伝子を他の遺伝子にくっつけとくとその遺伝子によって作られた細胞が体内でどのように動いたり増殖したるするかをやっぱり目で追っていけるわけだ。その生き物を殺さずに、生きたままで染色できる

 中3で細胞の核を染色して観察することを習うけど、その時細胞を殺すよね。その染色を生きたままできるわけだ。例えばがん細胞にGFPを組み込むと、そのガン細胞が体の中でどのように他の部位に転移していくかが、青い光を当てると緑色に蛍光を発するのでずーっと見ながら観察できるわけだよ。神経1本を緑色に光らせて生きたまま観察できるわけだ。すごいだろ?

 ちなみに下村氏はイクオリンとGFPを発見し、その構造を決定しただけで研究対象を変えてしまった。その応用を考えたのは他の二人の学者で、今回のノーベル賞はその三人の共同受賞だよ。

 れいによって遺伝子関連が出てくると中学生にはちょっと厳しい。でも全体的には分かりやすいし、最前線の研究をしてる若手研究者達が書いてるので何より詳しいのがなにより良いね。

 ちょっと“例え話”が多いのが難。これは分かりやすくするためにやりがちなんだけど、気をつけないとかえって分かりにくい。「洗濯機が洗いと脱水の二層式じゃなく全自動であるように…」って言われても中高生にはね。

生化学若い研究者の会HP →私を押して。

 

◆中学生で読める度:★★★☆☆ 

◆内容充実してる度:★★★★    

 

光るクラゲがノーベル賞をとった理由

光るクラゲがノーベル賞をとった理由

  • 作者: 生化学若い研究者の会
  • 出版社/メーカー: 日本評論社
  • 発売日: 2009/04
  • メディア: 単行本
    価格 : 1785円

 

 

 オワンクラゲの写真はないけど、前にブログに出した江ノ島水族館のクラゲの写真でもお楽しみください。^^y

P1030620.JPG

P1030617 (2).JPG 

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コメント 10

かなりあ猫

くらげ…素敵で不思議な海の生き物ですよね。そしてそれが発光すると、もっと神秘的に感じます。
by かなりあ猫 (2009-05-23 17:37) 

すうちい

不思議で美しい生き物ですよね。
刺さなきゃきっともっと人気者なのに。
子供の時、海に行ってクラゲをとり、帰りに持って帰ろうと思って置いといたら、帰りにはなくなってました。ほとんど水なので、無くなっちゃったみたい。^^;
by すうちい (2009-05-26 14:51) 

SAKANAKANE

最近のトピックには全く疎いので、嬉しい情報です。
夜光虫は、ナイト・ダイビングでは、必ず先ず最初に感激するコトですね。
遺伝子で周波数を調整できる仕組みが興味深いです。出力側だけじゃなく、入力側まで変えられたら、本当にスゴイでしょうね。
それにしても、既存の生物から教えて貰うコトばかりで、生物ってホントに偉大ですね。
by SAKANAKANE (2009-05-30 20:08) 

すうちい

あれ?こないだコメヘンしたと思ってたらUPされなかったみたいです。すみませぬ。

きれいですよね、夜光虫やらウミボタルやら、それに陸の蛍!
何とも幻想的。
伊那の山奥で見た、水田いっぱいの蛍はきれいだったなぁ。
by すうちい (2009-06-04 11:34) 

mistletoe

デバ仲間、クラゲ仲間ですね。ムヒっ。
この本は立ち読みしました。
ウミホタルの実験羨ましいなぁ。
子供の頃田舎にちょっぴり住んでいた時、家の前の川に
たくさん蛍がいましたっけ。
タニシがいなくなって年々減っていったけど
今はどうなんだろう。

山形の鶴岡…遠いけど是非、加茂水族館へ!
クラゲ館長さんがステキなお方です。
寒鱈祭りの時が最高デス☆真鱈の寒鱈汁のお祭り。。。
そして鶴岡駄菓子。


by mistletoe (2009-06-05 02:02) 

すうちい

生きたし、加茂水族館!あんど名古屋港水族館!

えっ、駄菓子!?
好きなんだよね-。ラムネ好きはすでにご存じかと。
そういえば、だいぶ前に名古屋に行った時、街を適当に探索してたら駄菓子屋問屋街を見つけました。左の上の方。
もちろんラムネを買ったっす。♪
by すうちい (2009-06-05 14:18) 

すうちい

そうだ、名古屋ボストン美術館の開館特別展に行ったんだ。
HPを見に行ったら開館10周年になってました。
つーことは、10年前に行ったみたい。
印象派展だったかなぁ。
by すうちい (2009-06-05 14:25) 

chima

クラゲの写真きれいですねー
水族館好きですv
江ノ島水族館の時のほうがクラゲが多かった気がするのですが
新江ノ島水族館は展示がきれいですよねー
by chima (2009-08-10 16:04) 

すうちい

あのいかにもな感じの昔の水族館の頑丈そうな水槽が良かったですよねー。
旧の方のクラゲの展示も良かったですね。自然な感じで。今やデートスポットですな。
by すうちい (2009-08-10 22:33) 

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