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97.有限の生態学 [生物]

 16日の市川高校を皮切りに教え子の高校入試が始まった。理科が関係するところとしては17日の東邦大東邦、18日の渋谷幕張からスタート。日程としては東工大附属高校の推薦入試が一番早いんだけど、今年は僕の教え子で受ける生徒がいない。

 17日の東邦は、まだ全員を把握していないけど、みんな頑張ったようで、なかなかうまくいってる。問題を持ってきてくれたF君は15分で終わったと言ってた。確かにパターン問題ですな、それなりに難しいが。もうちょっと難しくてもおもしろかったのに。←うまくいってるので強気デバ 〃゜⊆⊇ー

 18日の渋幕も知ってる範囲ではうまくいってるけど、まだ半分ぐらいしか結果を把握してない。1年よく勉強してきたんだから全員受かってるといいけどなぁ。明日お茶の水校で結果を見る。ちょっとドキドキ。[揺れるハート]

 渋幕は問題を回収されるので問題内容が詳しくは分からないが、「プラハの天文時計」というのが出たらしい。You Tubeを探したら映像があった。(高い受験料とっといて問題回収ってどういうこと?)

↓ こういう風に動くらしいよ。太陽の黄道上での動きやら月の満ち欠けやら20ぐらいのことが分かるらしい。

 wikipediaによれば、元々は15世紀に作られた時計らしいけど、その後たびたび修復・追加をされて今の形になってるんだそうだ。受験して受かったS君の情報では、なんと新宿アイランドにレプリカがあるらしい。今度見てきますです。

 

 明日も慶応女子推薦を始め、いろいろ推薦入試がある。中学入試も真っ最中でしょう。大学入試もね。

 理科が関係するところとしては、28日の東邦大東邦後期、そして公立の推薦(呼び方は県でまちまちだけど)までが前半戦、そして中盤は2月10日の開成、13日の国立附属高校、後半戦は各公立高校入試。教え子が一番多いのは13日の国立。60人ぐらい受ける。

 みんなガンバレー! 去年作った「オクトパス=置くとパス(合格)」の写真を今年も載せておきましょう。教え子&このブログを見てくれてる人関係者がパスしますように。(〃ゝω・人) それ以外の受験生もガンバってね。

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 一番右のは組み立て式。去年作って、セブンイレブンのコピーからプリントアウトできるようにしたやつ。一応今年もアップロードしといた。番号は「11226502」。これをセブンイレブンのコピー機のネットプリントへ入れれば良い。1枚60円だったかなぁ。最近使ってないので忘れちゃった。明日お茶の水校の下のセブンイレブンでプリントアウトしてみよ。 

 

 さて、このブログも始めてはや2年近く。ついに97冊目。間もなく予定の100冊になる。始める前は「100冊なんて簡単」と思ってた。科学関係の本は文庫・新書だけでかるく100冊以上は読んでたからね。岩波新書だけで30冊ぐらいかな。

 ところが始めて見ると、岩波新書は廃刊、重版未定のあらし。(*´Д`)=3 今出ているものもあらためて読み返してみると中学生にはなかなか読めない。そこでメインターゲットを岩波ジュニア新書にしてみた。岩波ジュニア新書はこれまであまり読んでなかったので、僕にとってはなかなかおもしろい、エキサイティングな2年間でした。

 さてさてその使えなかった岩波新書だけど、このブログを始めるにあたって、まず頭に浮かんだのがこの1冊、栗原康「有限の生態学」だ。たぶん高校生の頃に読んで、感動した。

「ある日、瓶の中をなにげなく顕微鏡でのぞいてみた。この水は三ヶ月ほど前に竹の煮汁を入れて、そのまま野外に放置しておいたものである。」から本文は始まる。

 放置しておいた三ヶ月の間に、空気中から バクテリア、原生動物、クロレラ、ラン藻、ワムシなどいろいろな生物が飛び込み、それらの生物が増えたり減ったりしながら、瓶(ビン)の中に調和した宇宙(ミクロコズム)を作り出していたのだ。

 著者はそこで「このたくまずして作られた生物共同体の安定と共存の秘密を解くために」一連の実験と考察を行い、それをこの本にまとめた。話は次に牛の胃の中の微生物の共栄システムに移り、宇宙基地という閉鎖空間での、もちろん人間を含めた共存システムの話になっていく。

 どこに感動したかというと、ふと見た水の中の生態系からそれらの関係を数量的にとらえ、システムとして全体を見通していったところだ。さらに、システムとして全体を見通したことで、今(本の初版は1975年)は無い宇宙基地の生態系を鮮やかに構築してみせたことだ。

 このブログの最初の頃に書いたけど、僕が通った高校の生物の太田先生の授業は、初めて出会う“学問”で、学校生活10年目にして初めて夢中になって聞いた授業だった。それは個々の生命現象について深く教えてくれた。でもこの本にはそれとは違う形の、システムとして数理的に生物を扱う生物学が詰まっていたんだ。

 「なんて世界はおもしろいんだろう…」と思ったんだよね。世界のとらえ方(の一つ)を教えてもらったような気がしたんだ。

 ひっさびさに読み返してみると、全体を通す柱は食物連鎖だから、中32学期以降なら分かる。ただし、“遷移”の発想が今の中学の理科では弱いし、一番おもしろいシステムとしてとらえるところも中学生には厳しいな。

 ただ“瓶の中のミクロコズム”における生物種の遷移の話は数年前まではよく高校入試で出た。川に有機物が流入するとバクテリアが増え、原生動物が増え、植物プランクトンが増え、バクテリアが減り、…っていうやつだ。Z会のテキスト群にも数問入ってる。

 まぁ、でもちょっと難しいですかね。今週は僕の思い出の書ということです、ハイ。

 

◆中学生で読める度:★★★☆☆   
◆内容充実してる度:★★★★★    ちょっと内容が古いところもあるんだけど、これは僕としては★5つは譲れないな。

 

有限の生態学―安定と共存のシステム (1975年) (岩波新書)

有限の生態学―安定と共存のシステム

  • 作者: 栗原 康
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1975
  • メディア: 岩波新書949
    価格 : 古本 1円から(なんと!)

 

 

 100冊まであと3冊。今週を入れて4冊はもうだいぶ前から決めてある。ちょっと“中学生の理科”からはみだしちゃうけどね。^^

 あっ、100冊が終わっても続けますよ、このブログ。ただ「毎週1冊紹介」はやめるけど。全部読んでる、いやボツにしたのもあるからそれ以上に読んでるので、さすがにこのまま続けるのはちょっと辛い。^^;

 本と関係ないネタと時々理科の本の紹介で続けていきたいと思ってます。理科以外の本も読みたいし。

 ちょうど国立附属高校の入試の頃いったん終了。さぁ、ラスト3週。僕も頑張らねば。[パンチ][パンチ][パンチ]


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96.小鳥の歌からヒトの言葉へ [生物]

 このあいだ紹介した「91.ハダカネズミ」の著者岡ノ谷一夫氏は動物の鳴き声によるコミュニケーションの研究者で、そこからヒトの言語の発達の原初を探ろうとしている。

 その岡ノ谷氏が、同じ岩波科学ライブラリーに、元々の研究課題である鳥の鳴き声について2003年に書いた本が今週の本「小鳥の歌からヒトの言葉へ」であるデバ。「ハダカデバネズミがおもしろかったので読んでみたデバ。 〃゜⊆⊇ー ←ハダカデバネズミ^^

 岡ノ谷氏は、アメリカのメリーランド大学で動物の音声コミュニケーションに関する研究方法を学び帰国。千葉大学で小鳥の歌の研究を始められた。現在は理化学研究所(理研)に所属しておられようだ。これはこのあいだも書いたか。

 ジュウシマツの「歌」によるコミュニケーション、その発達をかなり深く掘り下げてを研究していてなかなかおもしろい本だよ。

 ところでジュウシマツって分かる?僕が子供の頃はよく飼われてたんだけど。僕も飼ったことがある。部屋で放し飼いにしてたら窓から逃げちゃった。wwwバカな子。ちょっと鳥との友情を信じてみたんだけどね。

 最近は小鳥を飼うのがあまりはやってないみたいで、生徒に聞いても小鳥を飼ってるうちは少ないなぁ。やっぱり犬が最近は多い。猫など他の動物はわりと少ないな。Wさんはお父さんが海で採ってきたタコを飼ってるそうだけど。^^;

 こんなやつだよ、ジュウシマツは。漢字では十姉妹と書く。

WS000452.JPG wikipediaより

 東南アジアにいるコシジロキンパラという野鳥を江戸時代に家禽化したものらしい。ジュウシマツになってから250年たってない。だから単純なコシジロキンパの鳴き声と比較することで、その「歌」の発達のようす、進化のようすが解明できるわけだ。

 ところで「鳥の歌」といえば、「53.進化とはなんだろうか」の著者長谷川眞理子氏(学大附属高校卒だよ)が前にTV(たしかNHK)で「最近のクジャク界のオスのトレンドは羽根のきれいさではなく、鳴き声のきれいさ。」と言っていた。

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 羽根のきれいさにはメスが飽きちゃったのかも。声のきれいなオスがメスを獲得できて、子孫を残せる。すると、今度は羽根ではなく声がどんどんきれいに、鳴き方がどんどんうまくなっていくのかもしれない。こういうのを「性淘汰(せいとうた)」という。

 ジュウシマツもペットになって、安全なところでオスが自由に鳴けるようになり、メスがその「歌」にひかれ「歌」が発達したらしい。この本の後半のその内容の部分はなかなかおもしろいよ。

 鎌倉と逗子の間に披露山公園ていうのがある。上のクジャクはそこで飼われているお方たち。当然のことながらハダカデバネズミには興味がない、っていうか避けてた。^^;

 そこでその辺の雑草でつってみると…

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 近づいてきたところでデバと記念撮影。パシャッ!

 ここは戦争中は高射砲の基地だったそうで、高射砲の円形の台座跡が3つあり、花壇、展望台、

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 なぜかサル山になっている。オリの中がサル山だよー。海を望む岬の上のサル山。

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 鳥はそれとは別に何種類か飼われてる。展望台からは富士山がこの日はよく見えた。ちょっと水蒸気が多くてクリアじゃないけど。

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 サル山にはニホンザルが十数匹。去年生まれた子ザルは名前はなぜか「エダマメ」だって。

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 話を戻そう。鳥の研究といえばニコ・ティンバーゲン(1907-1988)。理科散歩1冊目の本「1.ソロモンの指環」 (今日は自分リンク多め^^;)の著者コンラート・ローレンツと共に動物行動学を拓いた人だ。

 そのティンバーゲンに動物行動学研究の概念的な枠組みである「4つの質問」というのがある、というのをこの本を読んでいて20年ぶりぐらいに思い出した。

 そうか、集英社新書の長谷川眞理子「生物をめぐる4つの『なぜ』」これだったか!しまった、「なぜなぜ本」かと思って本屋で目についたけど読まなかった。wwwそのうちとりあげよう。

 話を戻そう。「4つの質問(この本ではこう呼んでいる)」とは、

行動のメカニズム その行動がどのようなしくみによって可能になっているかを探る研究
発達 その行動が個体発生の過程でどう獲得され、どう発現するのかを考える
機能 その行動をとることにより、その遺伝子群(つまり個体群みたいなもの)がどのような利益を得るのかを知る
進化 その行動がどのような淘汰(とうた)によって進化してきたのかを知る

である。

 岡ノ谷氏はこの4つの質問に沿って「ジュウシマツはなぜ複雑な歌を歌うのか?」という研究を進められたそうで、この本もそれに沿って書かれている。

 だから動物行動学の入門としても良いかもしれない。中学生からはちょっとはずれちゃうけど。

 さて、全体としてはとてもおもしろい。最後は、研究の結果から、人類の言語の発達へのこれまでのアプローチに疑問を呈してる。

 チンパンジーなどを使ってやってる、まず単語を覚えさせ、次にそれを組み合わせて簡単な意思の疎通を図るというアプローチ、そうではなく、単語の発達と文法の発達は同時に進んだのではないかというのだ。なるほどー。今後の研究が楽しみですな。

 さてさて、その重要な文法、歌文法の解析の手段が高度でちょっと分かりにくいでしょう、中学生には。ここは大学生向けだね。他のところは読めるかな。「ハダカデバネズミ」の方が2冊目だけあって分かりやすいけど。中身充実度はこっち。まぁ、どちらも若い人のために書かれているので機会があったら読んでごらん。

 

◆中学生で読める度:★★★☆☆   
◆内容充実してる度:★★★★    

 

小鳥の歌からヒトの言葉へ (岩波 科学ライブラリー92)

小鳥の歌からヒトの言葉へ

  • 作者: 岡ノ谷 一夫
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2003/06/11
  • メディア: 岩波科学ライブラリー92
    価格 : 1155円

 

 

披露山公園でクジャクとエダマメとデバの写真を撮った日、夕陽がとってもきれいだった。そして陽が沈むと空には一匹の龍が…

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 ↑ 拡大はしてるけど、このまんまの色でした。

 

 冬期講習が終わり、入試へ向けてなだれ込んでおります。皆様のブログへのコメントが滞っておりますがお許しを(見には行ってますよー)。


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93.人類進化の700万年 [生物]

 Z会はもう先週末から冬期講習に入ってる。といってもプレ講座・オプション講座ですけど。

 僕も中1開成受験コースの“合宿”なるものを担当した。合宿と言っても、Z会の場合地方の生徒が東京に合宿に来る+Z会生で、地方から来た生徒はお茶の水のホテルに泊まって2日間のハイレベル演習をZ会生と共に受けていく。今年も秋田県やら熊本県やらいろんなところから来てくれました。

 本格的な冬期講習は26日から。なので気合いを入れるために、昨日授業が終わってからまたRolling Stonesの「Shine a Light」を六本木に見に行ってきた。

 最近のTOHO映画館はネットで好きな席を購入できるのでど真ん中をあらかじめゲット。

 渋谷から六本木なので、恵比寿で日比谷線へ。ついでにラーメン激戦区恵比寿でラーメンを食うか、と調べたら「AFURI」という店の“ゆず塩ラーメン”が評判がよいのでそこへ。ネットではローマ字表記だったが、行ったら漢字で「阿夫利」とあり、山の絵が看板に。

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 丹沢山地の大山阿夫利神社と関係があるのかしらん、と思い調べてみると、大山のわき水をスープに使ってるらしい。なるへそ。

 ちなみに「阿夫利」「雨降り」からの転化と言われてる。海風が大山にあたり上昇すれば、上空の気圧の低さで空気が膨張し、温度が下がり、露天に達し、雨が降るからね。下の写真の左は相模湾。見るからに雨が多そうな地形だな。

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 もちろん“ゆず塩ラーメン”を食べた。おいしかったっす。特にスープ。♪(o=゜▽゜) 今まで食べた塩ラーメンでベスト1をつけちゃお。といっても今まで塩ラーメンは10回も食べてないし、2番目は?と言われても「はて?(´・ω・`)?」なのだが。

 ただあっさりしてるので、食べ終わったらお腹がすいた。^^; 夜中、家に帰ってからお茶漬けを食べました。つけ麺もあったけど、つけ麺には向かなさそう。

 さて日比谷線で六本木へ。駅を降りてヒルズへエスカレーターを登っていったら、その先に光る星が!金星だ!ピッカピカ[ぴかぴか(新しい)] さすがの-4.5等星。というわけで、六本木でも思いがけす金星の採取に成功。

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 映画はもちろん大盛り上がり。ライフが8個まで復活。何とか冬を乗り切れそう。[黒ハート][黒ハート][黒ハート][黒ハート][黒ハート][黒ハート][黒ハート][黒ハート][失恋][失恋]

 いやぁ、何度見てもこの映画のミックは最高!太ったブタより痩せたミック・ジャガーになりたい。←中学生には意味不明か?

 キース・リチャードのギターのあの独特のリフ、アップストローク。最高!途中歌詞を間違えてミックに「間違えやがって。」と怒られてた。

 チャーリー・ワッツ67歳!相変わらずのまじめなでもパワーのある重いドラム。でも終わりの挨拶ではおじいちゃんでした。ロニーはどうでもよしと。^^; →アメリカ版trailerへ。

 映画が終わって毛利庭園を通ってけやき坂方面へ出たらまた輝く星が![ぴかぴか(新しい)] この時間だとシリウスか!よーく見るとオリオン座も発見。さらに先を見ると、おーっ、おうし座のアルデバランだ! なんと六本木でもちゃんと見えるんだね。コンパクトデジカメでは厳しそうなので写真は撮らなかった。三脚持ってないし。

 

 さて、全然関係なく今週の本ですが、三井誠(読売新聞の科学部の記者らしい)著「人類進化の700万年」としましょう。丸善をぶらついてて見つけた。

 現在のところ、最古(700万年前)の猿人(ちなみに猿人原人旧人現生人類となる)はアフリカ中央部のチャドから出土した“ルーシー”ということになってる。ちなみにルーシーはこの化石発掘のお祝いパーティで流れていたビートルズの「Lucy in the Sky with Diamonnd」からとったらしい。

 このあと400万年間猿人のまま進化はやや停滞する。これが250万年前、大きく動く。脳が大きくなり、石器を作るようになった。この変化はあごの筋肉の弱体化も一因らしい。

 ゴリラがそうだけど、猿人も頭蓋骨がとがってる。これはあごを動かす強力な筋肉がついているためで、その結果頭蓋骨内の容積がとれない。このあごが弱体化して、筋肉が無くなり、頭蓋骨は大きな脳を収める容器になったのだね。頭を触ってごらん。筋肉がついてないだろ?

 さて、20万年前についに現生人類が登場する。最初の現生人類は細胞内のミトコンドリアの遺伝子の研究からアフリカにいた一人の女性ということになってる。その女性につけられた愛称“ミトコンドリア・イヴ”という名前を聞いたことがあるかもしれない。

 現生人類をそれまでの旧人と分ける大きな特徴はやはり言語の発達であろう。それによってコミュニケーションがとれるようになり、社会が成立するようになる。そして分化が生まれる。

 これらの変化・進化、もちろん猿人→原人→旧人の進化もそうだが、遺伝子の変化がもたらす。ちなみに言語の発達にはFOXP2といわれる遺伝子の変異が関係している可能性があるという。

 

 この本は人類学の700万年間をざーっと俯瞰する。それもいろいろな説を否定されているもの(ネアンデルタール人のていねいな埋葬説はかなり怪しいらしい)を含めていろいろ紹介してくれる。さすがにジャーナリストで、客観的にいろいろな説を紹介してくれる。

 また、遺伝子についてや、年代測定法についてもいろいろ解説が入る。 文章も分かりやすく、なかなか良い本でした。ただ進化が教科書にない今の中学生にはちょっと微妙かな?どうでしょ。僕はお勧めしますが。ちなみに進化は次の教科書から復活する。まったく。{{{p(●`□´●)q}}}

 

 

◆中学生で読める度:★★★★   
◆内容充実してる度:★★★★    

 

人類進化の700万年―書き換えられる「ヒトの起源」 (講談社現代新書)

人類進化の700万年―書き換えられる「ヒトの起源」

  • 作者: 三井 誠
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2005/09
  • メディア: 講談社現代新書1805
    価格 : 798円

 

 遺伝子の突然変異淘汰(有利な形質は広がり、不利な形質は取り除かれる圧力がはたらくことこと)なんだよね、結局。

 例えばお酒が強いか弱いかはアルコールを完全に分解する酵素があるかどうかで、これは遺伝子の中のG(グアニン)が一カ所だけA(アデニン)に置き換わってることで起きる現象だそうだ。これが生存に有利か無関係であればその形質がだんだん広がり、生存に不利であればその形質(を持った個体)は消えて行く。

 偶然であり、必然の結果生まれた我々現生人類。人生を楽しまねばね。


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91.ハダカデバネズミ [生物]

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 ハダカデバネズミでやんす。ハダカでデバでネズミでやんす。

 ということで、今週の本は岡ノ谷一夫吉田重人著「ハダカデバネズミ」。この衝撃の動物はTVで何回か見たことがある。数年前に上野動物園で飼育され始めたことは知ってたんだけど、見に行こうと思いつつ何となく後回しにしてきた。

 しかし、先週の金曜に「次の本はと…」と本屋を物色してたらこの本を見つけ、買って読んだ。読んだらもうとりこです。このハダカでデバなネズミ(以下この本に習ってデバにする)に。昨日上野動物園に早速見に行ってきたっす。いやぁ、30分ぐらい見続けてしまった。

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 アフリカの東の方に住んでるんだけど、地下に総延長1㎞にもなるトンネルを掘り、哺乳類なのに女王を中心とした社会をつくる。まぁ、人間もそういう社会をつくったりするが。

 ミツバチの社会をイメージしてくれればよい。子供を産むのはでかい女王様デバだけ。交尾相手のオスデバが何匹かいて、働きデバがいて、兵隊デバがいて、肉布団デバがいて、…、えっ、肉布団デバは何かって?

 何とハダカデバネズミは哺乳類なのに変温動物なのだ。アフリカの地下に住んでいるので年中気温が変わらない。そのために毛が無いどころか変温動物になってしまったのだ。

 ところが子デバは体が弱いのでまいってしまうことがある。そこで肉布団デバが育児室に自らしきつめられ(ちょっと表現が難しい^^;)、子デバがその上をうろうろしたり、女王デバがやってきて授乳したりする。

 兵隊デバもすごい。地下トンネルにヘビが進入してきたりするんだけど、そうすると兵隊デバが突進して行き…率先して食われる。なんてこった!埼玉県こども動物自然公園にはその様子のジオラマがあるらしい。この本の最後にその写真が載ってた。

 女王デバが一番でかい。一度に子供を10匹ぐらい産む。見てきた上野動物園の女王デバも妊娠していて、おなかの中に10匹ぐらいいる感じ。でもその女王様を他のデバが踏んづけていったりする。

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 見にくいけど下にいるでかいのが女王様。上をはたらきデバみたいなやつが踏んづけていく。でも尊敬されていないわけでもないようで、この本によればデバたちはいくつかの鳴き声を使い分けてコミュニケーションをとっているのだけど、ちゃんと女王は女王として扱われてるらしいよ。

 この本の著者岡ノ谷氏は元々は千葉大学で言語と情動の関係を研究していたそうで、その時にこのハダカデバネズミと出会い、社会を形成し、言語を使ってコミュニケーションをとっているということで研究対象にしたんだそうな。

 岡ノ谷氏は現在は理化学研究所生物言語研究チーム(→HPを率いて研究を続けているんだけど、千葉大にはいまだにその時のデバが飼い続けられていて、展示されてるらしい。

 鳴き方には「弱チュー鳴き」とか「強チュー鳴き」とか女王の「謎の歌」とかいろいろあるんだけど、目的に応じて使い分けられてるらしい。この鳴き声は岩波書店のHPで聞けるよ。動画も見られる。 → 私を押して。 (行き先の分からない人はこっち。 → 私を押して。

 デバたちは飼育施設の中のアクリルパイプの中を行ったかと思うとまた戻ってきたり、バックしたり、上向いてもがいてみたり、見てるととにかく動きが変。何もかも変。寿命も変。岡ノ谷氏が飼ってる女王はネズミの仲間なのに37年(!)も生きてるんだって。「ゾウとネズミの時間」はどうなっちゃたんでしょ?

 デバはくちびるの外に生えてる。ミツバチのような社会をつくってるのに、なまけ者もいるらしい。反逆するやつもいるらしい。謎と不思議と例外だらけの生きもの。いやぁ、自然は深いですな。

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◆中学生で読める度:★★★★★   
◆内容充実してる度:★★★★    

ハダカデバネズミ―女王・兵隊・ふとん係 (岩波科学ライブラリー 生きもの)

ハダカデバネズミ―女王・兵隊・ふとん係

  • 作者: 吉田 重人
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2008/11
  • メディア: 岩波科学ライブラリー151
    価格 : 1500円

 

 この本のイラストはべつやくれいさんが描いているのだが、これがなかなかとぼけた味で良いんだな。どんな人かと思って調べてみたら劇作家別役実の娘さんだった。別役実は一時期ずいぶん読んだなぁ。20年ぐらい前の話だけど。

 べつやくれいさんはniftyのDaily Portal Z(たしかMANTAさんお勧めだった)でおかしくもばかばかしくもおかしい連載をしてる。 → 私を押して。 うーん、はまるとまずいので受験生は見ない方が良いかも。もっとも中学生がはまるのかどうかはちょっと分からないけど(僕はどっぷりはまってる^^;)。

 

  半年ぶりぐらいで上野動物園に行ったけど、下の西園に行く橋からふと下を覗いたらオオアリクイが見えた。子供動物園の中なので今まで行ったことないし、気づかなかった。見に行ってみたら口を突き出し、なかなかラブリーなお方でした。^^

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 他にも小獣館やら夜行性動物館にはツチブタやら、アルマジロやら魅惑的な動物がいっぱいいたんだけど、みんな寝ていて写真が撮れなかった。残念。

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 寒いのにカバは元気じゃのう。^^

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 もふもふのマヌルネコ。ネコはやっぱり舌が出ちゃうんだね、野生でも。^^

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90.細胞のはたらきがわかる本 [生物]

 ついに師走となりました。まだ僕は走ってませんが。

 16日から走り始めます。つまり冬期講習が始まる。もちろんまだ学校の授業があるので、夜、様々なオプション講座を持つわけですだ。助走ですな。本格的な冬期講習は26日から。

 僕が普段受け持つ生徒は、国立開成コース生が約70名、公立コース生が約40名。冬期講習は国立開成コースだけ、午前お茶の水校舎、午後渋谷校舎と教えてまわる。この間、当然移動があり、昼食タイムが15分しかない。TT

 夏期講習に引き続き“おにぎり×3個”シリーズに突入です。orz

 去年は基礎知識事項をまとめた理科の骨格となる副読本「カルシウム」をつくったので、すでにへとへとでしたが、今年はわりと体力温存中。

 もっとも生徒がなかなか走り始めないので(俺より先に走れ!)、精神力は消耗して、ライフが3つしか残ってませんけど。[黒ハート][黒ハート][黒ハート][失恋][失恋][失恋][失恋][失恋][失恋][失恋]

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 去年は「理科の背骨」だったんだけど、mantaさんに教えてもらったMSで探したらこの絵を見つけたので、今年は「理科の骨格」に変え、こんなんなりました。コツコツと読み込んでね。 ←出すかどうかためらった親父ギャグ^^;

 

 今週の本は岩波ジュニア新書から伊藤明夫「細胞のはたらきがわかる本」。本屋でぱらぱらっとページをめくって、高校生向けの図版・数式が少ないことを確認して買ってきた。

 いつもそんな感じで買う。まず“香り”で中学生に読めそうもないものをカットする。あとは実際に読んで「中学生には無理!」と思ったらボツにする。まぁでも岩波ジュニア新書は無条件採用だけどね。無理なものは「無理。」と評価すれば良いだけだから。

 この本はパラパラ見た時には「細胞内器官の説明が多いのかな…高校生じゃないと厳しいか…」と思ったんだけど、何しろ今の中学の教科書では「細胞膜に包まれた細胞質の中に核があります、ちゃんちゃん♪」でほとんど終わってるから、でも読み進めてみるとそうではなく、なかなかおもしろかった。

 まず細胞が生まれ、増え、死ぬ、ということについて、4章をさいて分かりやすく説明してくれる。具体的な例も出ているので、興味を持って読めそう。

 無性生殖では、完全なコピーがつくられ続けていくので、個体は死なない。有性生殖になり、 「別の個体をつくりあげたもとの体はもう生物としての役目をはたし終えたのです。そこで、寿命が与えられ、死がおとずれることになったといわれています。」「死は性と共にやってきた」のですか。

 なるほどね。これは授業のネタに使えそう。^^ もちろん生物的な生・死の話しで、人生の目的はまた別だね。人それぞれだ。

 5章目からは細胞が連携して体を形作っていくこと、維持していくことの説明になる。ここはちょっと難しいけど、中学生にも何とか読めそう。

 なるほど、つまりこの本は細胞を題材に「生命という複雑系」を中高生向けに解析してみせた本ということですな。「細胞内・の・はたらき」なと思って買ったんだけど、まさに「細胞・の・はたらき」がわかる本でした。

 「細胞内・の・」器官については7章、8章にちょっと載ってるだけ。生物の全体像が見えてくると、今度は「細胞内・の・」器官についての詳しい説明が欲しいな、なんて思ってみたりしてます。最初は「それじゃつまんないな…」と思ってたのに。^^;

 

 他のこの手の本同様、DNAの説明は省いてる。そりゃそれだけで1冊になるからね。だからそこんところが中学生には読めない。それとフィードバック機構のところも聞き慣れない物質名を使っての説明なので厳しそう。他は読めるかな。おもしろいよ。テクニカルタームが少ないので、大人も気軽に読めそう。  

 

 自分で撮った細胞の写真は前に使っちゃったので、それに変わるものが何か無いかとNHK教育テレビを探っていたら良いものを見つけた。知る人ぞ知るすばらしい番組「ミクロワールド」と「10minボックス」のアーカイブだ。

ミクロワールド →私を押して。

10minボックス →私を押して。

 「センチュウ罠にかけて食べる菌糸」なんていう驚きの映像が満載。まだ僕も全部は見てないけど、おもしろいよー。

 

◆中学生で読める度:★★★★  どうしてもDNAのところが中学生にはねー
◆内容充実してる度:★★★★★    

細胞のはたらきがわかる本 (岩波ジュニア新書)

細胞のはたらきがわかる本 (岩波ジュニア新書)

  • 作者: 伊藤 明夫
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2007/09
  • メディア: 新書
    価格 : 819円

 

 

 まだ西高東低の冬型にならないので、小春日和が続いてます。ある日渋谷校舎を出たらセルリアンタワーの向こうに輝く積雲が。

 雲マニアとしては写真を撮っとこうと思い、歩道橋を登って雲がよく見える場所…と思っていたら、ちょうど小型プロペラ機が光る雲の中に入ってきた。

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 のどか。冬将軍は寝坊か? そーっとしとこ…


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