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98.利己的な遺伝子 [生物]

 高校受験真っ最中です。まぁ中学受験も大学受験もですけど。特に中学受験は日曜からがたしか山場ですよね。頑張ってね!というか頑張ってください、お父さん、お母さん!

 先週は「置くとパス」を出したけど、今週も去年も出した上野大仏を出しとこ。どーん!

上野大仏.JPG

 この上野大仏様、上野動物園の正門の左の小山の上におわす。3年前に知ったんだけど、かつてはちゃんとした大仏として上野の山にあったらしい。それが地震やら火災やらでたびたび首が落ちるので、ついに顔面だけ外し、写真のように台座に埋め込んでしまった。

 これでもう“絶対落ちない!”ということで、今は受験の神様(仏様?)になってる。お祈りしときました、みんなの合格を。ガンバレー!

  

 さて、僕も頑張ってます。ついに98冊目。これも初めから入れようと思ってたリチャード・ドーキンス「利己的な遺伝子」だ。

 おっ、ついにきたか! 名前は知ってるけど読んでない…^^; という感想が大人の間から聞こえてきそう。歴史的な書といってもいいんだけど、意外に読まれてない。去年の中3のK・runeちゃんと話してるときこの本の話題になり、この辺の生物観の変遷を話したら「ちゃんと読んでる人に初めて出会った!」と驚いてた。

 まぁ、中学生で読んでる人はまずいないだろうけど、まわりの大人にもいなかってことか。たしかK・runeちゃんのご両親は医学関係だから、そのまわりには読者がいるはずだが。そもそも彼女はちゃんは読んだんだろうか?そこんとこを聞くのを忘れた。

 とまぁ、読んでることを驚かれるぐらい読まれてない。けど内容というか、そのエッセンスはかなり前から生物の教科書にちりばめられている。だから、そう、30代以下ぐらいの人はこの本の発想は多かれ少なかれ高校で習ってるはずだ。僕が持ってるのは1989年版だけど、一番古いのは1976年版だからね(今は増補新装版になってるみたい)。もちろん生物の先生によってはもっと前からこの本の発想を持っていたと思うけど。

 しかし、DNAの二重らせんの構造をワトソン、クリックが発見したのが1953年だから、わずかそのあと20年でこの発想まで来たのはすごい。ヒトのゲノム(染色体上の全遺伝子のこと)の解読なんて遠い未来のこと(実際には2003年に終わった)と思われてた時代だからなぁ。まぁ、だから本の内容でその後疑問視されてる部分も当然いろいろあるわけだが。

 さて、今回久々に読み返して、というか本当はまだ読み返し終わっていないが、やっぱり刺激的な内容だなぁ。中心となる発想は、扉内側にある言葉を借りれば、

 われわれは遺伝子という名の利己的な存在を生き残らせるべく盲目的にプログラムされたロボットなのだ。

ということで、遺伝子こそが生命の本質で、われわれ生命体はその乗り物にすぎない、という。遺伝子という“利己的”な自己複製子は、自分のコピーを最も多く増やせることだけを優先させて生命体を進化させてる、という。『生物=生存機械論(表紙より)』だ。

 この発想が、当時次々と明らかにされる遺伝の驚くべき仕組みと相まって、世界を大激震させた。かつ「あーっ、そうだったのか! 我々生命とは何だったんだ…orz 」とみんな一瞬思ってしまった。

 ところで“利己的”の反対語は“利他的”、つまり自分は犠牲になっても他人のため、ということだが、この本が出る前の動物行動学の主流を占めていたのがこの発想だ。このブログの1冊目「ソロモンの指環」の著者コンラート・ローレンツたちが提唱した動物行動学の発想だ。

 動物の行動の基本原理は“自己の遺伝子”を残すためではなく、その“種の遺伝子”を残すことである、というもの。そのことで動物の様々な行動が説明できるという。しかしこの本はそれをひっくり返した。

 つまりこの本は単なる遺伝子の勝手な振る舞いを語っている本ではなく、動物の行動を“利己的な遺伝子”が主役という観点から解き明かしていく本なんだよね。だからゲーム理論なんかも出てくる。だから思想、教育界まで巻き込んだ大論争になった。だから何となくみんな知ってる。

 さてさて、“生物=遺伝子の乗り物” “生命=遺伝子の発現の表徴”という発想に嫌悪感を抱いてる人もいると思うが、今はさらにこれも超えたところに生命があると考えられている。遺伝子すら生命の“道具”だったという発想だ。

 遺伝子のはたらきが次々に分かってくると、遺伝子のスイッチが次々と切り替えられていくこととか、同じ遺伝子がいくつかの働きをするとか、ゲノムのほとんどが意味が無さそうだとか、その間に様々な物質が介在し、その濃度の差までも利用して生命ができあがっているとか、遺伝子を含めた様々な物質、重力までも利用して複雑系としての生命が成り立っているという生命観がいま組み立てられてきている。

 というか、ますます生命とは何か分からなくなってきているということですかね。のぞけばのぞくほど深い。いったい生命って何だろうね?

 

 だからまだ研究することが、考えることがいっぱいあるよー。理系に進めー!^^

 

◆中学生で読める度:★★★☆☆   
◆内容充実してる度:★★★★★    今週も、遺伝子に関して内容がちょっと古いところがあるけど。

 

利己的な遺伝子 <増補新装版>

利己的な遺伝子 <増補新装版>

  • 作者: リチャード・ドーキンス
  • 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
  • 発売日: 2006/05/01
  • メディア: 単行本
    価格 : 2940円

 

 

 

 チョコチップスの「合」バージョンと「格」バージョンを合わせて『合格』!みんなガンバってね。

P1050418.JPG


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コメント 7

いっぷく

受験シーズン真っただ中という状況なのかな、最後には合格するために神頼みとか縁起をかついだりですね。
上野大仏のお顔をみると日本独自というよりどことなくインターナショナルな風貌ですね。
by いっぷく (2009-01-29 05:11) 

アヨアン・イゴカー

竹内久美子『そんなバカな!』でドーキンスの利己的遺伝子を知った自分は、まだドーキンスを読んでいません。Richard Dawkinsの考え方、物事について考えされされますね。
積読ではありますが、辞書のように厚い『The Ancestor's Tale』をつい買ってしまいました。あっ、しまった、殆ど読んでいないのに買ったことを告白してしまった!
by アヨアン・イゴカー (2009-01-30 00:11) 

すうちい

>いっぷくさん 最後は何でも自分の味方にすれば良いんですよね。雨でも雪でも。吉瑞だと思って。

wikiに大仏だったときの写真があるんですけど、なんか変です。いや、これは気を悪くされてしまうかも。なんか独特です。^^:
by すうちい (2009-01-30 13:30) 

すうちい

>アヨアン・イゴカーさん あの分厚いやつですね。とりあえず逃げてます。^^;

本屋に行くと、あれもこれも欲しくなっちゃいますね。
このブログを始める前に買っておいて、読めず、積読になってるのが数冊どこかに…すでに下の方の地層の中です。
by すうちい (2009-01-30 13:38) 

SAKANAKANE

確かに、これ程有名なのに、実際に読んだ人はほとんどいないと言うのは、あまり無いでしょうね。(日本では、聖書とかかなぁ・・・)
かく言う私も、モチロンご多聞には漏れていません。
生物と言うのは、どこまでオートマチックなのか、「遺伝子を残す」という意志が存在するのか、生きている内に知りたいモノですね。
by SAKANAKANE (2009-01-31 21:58) 

すうちい

知れば知るほどオートマチックと…反対語は何だろう?マニュアルかな?の境目にあるような、両方の微妙なバランスの上にあるような気がします。
by すうちい (2009-01-31 22:44) 

ヴィトン 公式

今日は~^^またブログ覗かせていただきました。よろしくお願いします。
by ヴィトン 公式 (2013-06-29 00:38) 

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