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37.生態系ってなに? [生物]

 今週紹介する本はつい先日出たばかりの江崎保男著「生態系ってなに?」にしよう。

 東京は今、紅葉まっ盛り。ところで、都内で見る紅葉は、モミジより、サクラの方がきれいだと僕は思う。モミジの樹形は上の方が広がっているから、寺社の境内の広いところ、六義園のような庭園では映えるが、こんだ街並みの東京ではモミジの赤はペタンとしてしまい、なんだか浮いた感じがする。

 は、色づいた葉の中に色のグラデーションがあるので、1本の木でも、木の中に何とも言えない遠近感があり、見ていて飽きない。カエデは借景(しゃっけい≒背景)との間で遠近感をつくっているのだな。だから東京でポツンとあると舞妓さんが道に迷っているよう。サクラは“”だ。 

 

 さて、この落ち葉はいろいろな生物の餌となる。ダンゴムシ、ミミズ、トビムシ、…が食べ、最後はカビ、キノコやバクテリア達が無機養分に分解する。するとそれを植物が“食べ”、有機物を合成し、われわれ動物がそれをいただく。食物連鎖だね。

 落ち葉はカビ、キノコやバクテリアが分解してはじめて植物の良い肥料となる。だからためておいて腐葉土として利用する。我が家のそばの碑文谷八幡神社の境内には「落ち葉ンク(落ち葉の銀行の意味)」なるものがあり、神社境内の落ち葉をためて、腐葉土にしている。

  この本によれば、落ち葉などの死物をデトリタスと言うらしい。このデトリタスが食物連鎖上、重要な意味を持つ。多くの栄養、エネルギーがこのデトリタスを通じても次の生物に渡されていく。いわば食物連鎖リレー上の“バトン”というか“たすき”のようなものだ。

 この本の前半は、この食物連鎖の話が中心になっている。森の中の落ち葉を“たすき”とした食物連鎖の話しから、川や海の中の食物連鎖の話し、そして食物連鎖に関連したエネルギーの流れ、収支の話しと続く。

 ここがちょうど中3の学習内容とダブルのだが、数字がからんでいて、ちょっと中学生にはきびしいかもしれない。何しろ絵が全くない。少し図解してくれればいいのにな。

 ところで、この前半の中のある一節が胸にズンと来た。
  『植物の生産量(光合成量)が地球上に生存できる生物量の大枠を決めている。』

 緑色植物が唯一の栄養を生産できる生産者なのだからあたりまえの話しなのだが、こうはっきりつきつけられると、リサイクルがちゃんとできていない僕にはズンというかギクリときた。植物がちゃんと生存できる世界でないと、結局われわれは滅びるわけだ。明日からはヤクルトの容器はちゃんとポリに分別します。^^; 

 後半は、チャールズ・ダーウィンの「進化論(そのうちとりあげる予定)」とリチャード・ドーキンスの「利己的な遺伝子(いつの日かとりあげる予定)」を軸に、生態系を構成する動物たちの相互作用と、その相互作用の進化の様子を、興味深い事例(多くは著者の研究による)をもとに説いていく。

 たとえばクジャクのオスのきれいな羽根は、目立ちすぎて捕食者のかっこうの標的になるはずだが、『あれだけの邪魔になる長い尾を身につけていても、ちゃんと生き残っていけるだけの高い能力を自分が持っているのだと主張している』というハンディキャップ理論なるものを紹介したりして、読んでいて飽きない。

 食物連鎖を習った中学生が、生態系の入門書・啓蒙書として読むにはとても良い。しかし中2・中1にはちょっときびしい。何しろ絵・図が1枚もない。いろいろな事例や例えをちりばめて分かりやすく書いてくれているのだが、高校生以上向きかなぁ。でもいろいろな事例を読むだけでもおもしろいよ。生物の研究ってそんなこともやるんだ、ということもわかる。

 ということで、中3以上には★4つ、中2以下には★3つ。

 

◆中学生で読める度:★★★☆☆
◆内容充実してる度:★★★★★

 
生態系ってなに?―生きものたちの意外な連鎖 (中公新書 1923)

生態系ってなに?―生きものたちの意外な連鎖

  • 作者: 江崎 保男
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2007/11
  • メディア: 中公新書1923
    価格 : 777円


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めりっさ*

有機農法を解説している園芸書などを読んでいると、腐葉土の作り方などが出ていますが、なかなか本格的な腐葉土作りは出来ずにいます。とりあえず畑の片隅に落ち葉や雑草を積み上げて時々上下を返してやると、一冬越した頃には腐葉土になっています。(完熟しているかは定かではありません。)
あんなに沢山あった葉っぱがたったこれだけ?というくらい量が減って、初めは驚きました(笑)
こういう本を読むと、自分がなんとなくやっている腐葉土作りが地球環境に貢献しているという誇りが持てちゃうかもしれませんね!!
by めりっさ* (2007-12-06 13:04) 

mistletoe

食物連鎖ってとっても大事ですよね。
アスファルト道路にミミズがいるとついつい土に戻してしてしまう私です。
ミミズコンポストも欲しい!
紅葉といえばイチョウって不思議ですよね。
紅葉して落葉するのに分解されない。う~~~~む。

カエルのツボカビも心配。食物連鎖が大きく崩れますね。
by mistletoe (2007-12-06 13:32) 

すうちい

>めりっささん 充分地球にやさしい腐葉土だと思います。完熟ではないかもしれないけど、落ち葉のかけらが少し見られるぐらいが“いい感じ”がしますよね。うちも少しですけど、やってます。

>mistletoeさん この本によれば、ある種の植物は芽から葉が延びきると葉の中の窒素の含有量を減らすそうです。エサとしての価値を落とすために。少しは食わせるけど、たくさんは嫌!という植物のコストの計算高さがおもしろいですよね。

地球は今、7度目の生物大量絶滅に向かっているそう。守らねば、ガイアを!!
by すうちい (2007-12-06 23:04) 

サプライ

親戚で有機農法で栽培してますが
手間、暇かかるみたいです。

氷河が溶ける現象は過去にもあり
CO2(人間)だけの問題なのでしょうか
勉強不足で申し訳ありませんがメカニズム
どうなっているか、教えていただければ・・・。
by サプライ (2007-12-09 16:44) 

いっぷく

先日なるほどと読んでそのまま閉じてしまった。
あれ?コメントも残してないって気がつきました。
ためになる話毎回ありがとう。
知っていると思うような話しでも実は浅くしか知らないので
ここまで書いてもらうと感心しちゃいます、なんだ知ってるつもりで
案外知っていなかったって認識する。
良くできていますねこの生態系って。おてんとうさまはありがたい。
by いっぷく (2007-12-09 19:08) 

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